ファシリテーションのある会議を進めよう

「あ~、言葉が通じない・・」「バラバラの意見をどう一つにすれば・・」

こんな悩み、ほんのちょっとの工夫で、変えていけるかもしれません。

本記事では、
①ファシリテーションとは何か
②どうすればファシリテーションのある会議にしていけるか
をまとめてみました。

【留意事項】本記事ではファシリテーター(1人の人物)がどうあるべきかといった具体的な説明を行いません。これは、すごいスキルをもったファシリテーターを雇わないと何もうまくいかないという思考停止を避けるためです。地域には、そんな優れた人で溢れていません。逆に、誰もがファシリテーションを理解して、ファシリテーションのある会議を皆でつくっていくが現実的だと考えられます。

1.ファシリテーションとは

ファシリテーションは、1960年代にアメリカで組織開発やグループワークの分野で体系化・普及され、様々な分野で活用されています。参加者の意思や思いを引き出し、課題を浮き彫りにして共有したうえで、解決の方向性を見出す手法です。2011年に起きた東日本大震災においても、ファシリテーションが活躍しました。緊張で張り詰める避難所や地域住民の話合いを、模造紙やポストイット、マーカーを使って状況を見える化を行い、ファシリテーションのある話し合いが、合意形成や意思疎通の一助になったとのことです。

2.ファシリテーションが地域づくりに必要な理由

地方の「人口減少」と世界的な「多様化」の流れが、ファシリテーションの必要性を強めていると考えられます。これまで“同じ釜の飯を食う”といった生活の一部を共有する組織・文化が当たり前でしたが、現在はどうでしょうか?同じ地域に住んでいても働き方や生活スタイルも多様化しています。

地域を維持・改善するニーズの把握には、様々な価値観を持つ人で議論しなくては分からなくなっている時代です。更に、地方では人口減少が加速しています。地域活動はシニア世代が担うといったこれまでの流れでは、地域を維持し続けることが難しくなっています。

だからこそ、多様な価値観の中から一つの方向性を見出すファシリテーションが、地域づくりで大きな力を発揮していきます。

3.ファシリテーションの目的・意義

話し合いには、中身(コンテンツ)と進め方(意見の出し方やゴールに至るプロセス)が存在しています。ファシリテーションは、プロセスの舵取りを行うことで、納得できる結論をだしていく手法です。そして、前述のような時代背景を踏まえると、ファシリテーションを行うことの意義には、以下の2点が含まれると考えられます。

・多様な意見から、共通点を見出すこと(互いが納得できる目標や解決・優先策の模索)

・互いの背景や文脈を共有し、意思疎通をしやすくする(心理的な壁や距離感の解消)

4.ファシリテーションのある会議を始めよう

本節では、具体的にファシリテーションのある会議を行うための具体的なポイントを紹介していきます。すでに実施している会議・話し合いを想像しながら、パワーアップを図っていきましょう。

ポイント① 事前準備:席配置の工夫&ホワイトボードの用意

ファシリテーションのある会議では、意見交換のしやすい空間をどう作るかが大切です。会場を変えたりすることは難しいですが、意見交換のしやすさを考えた席の配置を考えみましょう。机をなくし、椅子のみで円を囲むといった方法も意見交換がしやすくなります。

ホワイトボードが会議室にある場合は、必ず使いましょう。議論や意見が見える化されることで、うまくいかない会議の原因を取り除くことができます。

≪原因≫
・途中で話題から外れた無駄話
・空中戦によって、内容が分からず、フラストレーションがたまる
・結論がよく分からない、もやもやが残る
などなど

大事なのは、「見えること、残ること、納得できること」と提唱されています。
皆さんが考える理想の会議イメージに当てはまっているのではないでしょうか?

ポイント② 目的・ゴール、会議のシナリオ確認

会議がうまく進まない原因として、その会議の目的やゴールが最初に参加者に共有できていないことが挙げられます。また、話し合いの途中で、話題がずれてしまうこともあります。会議の最初に明確に示しておくこと、特に、ホワイトボードなどを使い見えるようにしておくと効果的です。また、会議の次第(アジェンダ)も大切です。もしない場合は、その場で進め方(シナリオ)を決めて会議を始めましょう。

企画やアイデア出しの議題については、収集がつかない、時間が過ぎてしまうことが多々見受けられます。進行シナリオ(例 目的・状況・課題・対策・優先順位を順に確認整理)を具体化して進めましょう。

ポイント③ タイムマネジメント&「発散」と「収束」

ファシリテーションのある会議として、時間配分をコントロールしていきましょう。これは、無理にスケジュールを重視して会議を進めるということではありません。その場の状況によって、必要なアクション(例 目的に立ち返る)があれば、会議シナリオを変更するマネジメントの一つです。

話が長い人に対しては、割込みを入れることも必要です。また、大きな声で「なるほど!」と言って話を切り、「○○さんはどうですか?」と他の人に話を振ること、思い切って「お話の途中ですみませんが、・・」と目的を伝え直して話を終わらせるといった対応も大切なアクションです。

企画やアイデア出しの会議や議題では、それぞれの意見を出し合う「発散」の時間とその意見をグルーピングし、纏めや結論を導く「収束」の時間を明確にして進めることも効果的です。マネジメントしやすいと同時に、参加者も何の時間か(目的)が明確になります。ファシリテーションのある会議は、「発散」と「収束」を会議の中でうまくマネジメントしていくことだともいえるでしょう。

ポイント④ 参加者を「お客さん」にしない

ファシリテーションのある会議では、参加者をお客さんにしない(ただ座っているだけの参加者)を生まないようにします。もちろん定例会議など難しい場合もありますが、共感や賛同の演出(例 拍手)を入れることで、参加意識を高めていくことが重要です。

ポイント⑤ 進行共有と結論確認

会議の進行状況を全体に共有する・見える化することで、話し合いがスムーズに進みやすくなります。配られた資料だけでは、議論があちこちに飛んだり、蒸し返されたりして迷走することもあるのではないでしょうか?これでは、参加者のフラストレーションもたまってしまいます。話の展開が分かる・見える会議にすることで、満足度が高まっていきます。

そして、何よりも終わりが肝心。忘れてはならないのは、結論(議論の内容)を最後に確認することです。議題を持ち越す場合は、次回の検討課題として整理しておきます。尚、ファシリテーションを仕切った人が最後にまとめを説明することでもよいですが、結論について、参加者に説明してもらう、グループでまとめてみるといったアクションにすることで、 参加者の当事者意識を高める機会にすることも可能です。

5.ホワイトボートの使い方例

ホワイトボードの使い方にはいろいろな手法があります。オーソドックスな方法は、会議のアジェンダと参加者の記載し、書き出していく方法です。議題によっては以下のような使い方をしていくと分かりやすくなります。

・スケジュールライン

・アイデアツリー(マインドマップ)

・二軸分析(マトリックス) 例 ペイオフマトリックス 縦軸(効果的)‐横軸(コスト・手間)

・箱と矢印を使った図解

・To Do リスト(チェック欄を設ける)

・ベン図

・2本の縦線で対立と歩み寄りの糸口をさぐる

最後に

ファシリテーションは、参加者同士の意見交換を進めることです。司会(会長や役員など)が用意した案に対して、意見を伺うだけではファシリテーションのある会議とは言えないということです。時間の都合を考慮するならば、案を参加者の一意見として共有しつつ、参加者同士の意見交換を促すことが必要です。このプロセスを入れることで、結果的に反発や蒸し返しのない結論を出すことができます。地域づくりを活発にしていくために、ファシリテーションのある会議をぜひ意識して進めましょう。

参考書籍

・【1】人を動かすファシリテーション思考 著:草地真

・【2】図解でわかる! ファシリテーション 著:松山真之助

・【3】13歳からのファシリテーション クラスで、学校で、社会で役立つ コミュニケーション力が身につく本 著:ちょんせいこ

・【4】マンガでわかるファシる技術  著:龍造寺 慶, 船川 淳志, 深山 雪男